部活動の地域移行で保護者が負担する会費は、休日に週1日・月4日ほどの活動で月額1,000〜3,000円程度というのが国の示したイメージです。実際の額は市区町村やクラブが決めるので、住む地域によって差が出ます。会費のほかに送迎や大会参加費、けがに備える保険でも家庭の費用負担は変わります。
部活動の地域移行で会費はいくら?国のイメージは月1,000〜3,000円
スポーツ庁はガイドラインのFAQで、休日に週1日・月4日程度の活動なら月額1,000〜3,000円程度を「参加費のイメージ」として示しました。ただしあくまでイメージで、月数百円や4,000円程度の設定も、参加費を取らずに全額を公費でまかなう運営もあり得るとしています。
ガイドラインは、家庭が払う参加費の水準に「地方公共団体間で大きなばらつきが出ないように」するため、国が金額の目安を示すと定めています。認定を受けた地域クラブには「可能な限り低廉な参加費等」の設定も求めていますが、上限の金額は書かれていません。
地域クラブの会費が部費より高くなる理由
会費が学校の部費より上がることは、改革の出発点の段階で見込まれていました。2022年6月にスポーツ庁の検討会議がまとめた提言は、部費が安く済んできた理由を「教師が指導を担っているため指導料が生じず」と説明しています。そのうえで、地域のクラブに会費を払うようになれば「部費と比べて金額が上がることが想定される」と書きました。
指導者に適切な対価を払えば、その分が会費に乗るという説明です。提言は、部費より高い会費に「強い抵抗感を示す保護者が出てくる」ことも想定していました。
国は新しい補助金「部活動の地域展開等推進事業」を設けていますが、休日の地域クラブ向けの補助で対象になるのは指導者謝金や事務局の人件費などです。令和8年度予算の資料では、国の負担は3分の1で、残りを都道府県と市区町村が3分の1ずつ持つ形になっています。一般の家庭が払う会費を、国が直接肩代わりする仕組みにはなっていません。
地域クラブの月謝と困窮世帯への支援は自治体で違う
会費の額も、家計が苦しい家庭への支援の形も、自治体ごとに違います。
| 自治体 | 会費 | 家計が苦しい家庭への支援 |
|---|---|---|
| 千葉市(2026年9月〜2027年3月の休日モデル事業) | 月額1,000円(7か月で計7,000円) | 生活保護・就学援助を受ける世帯は申請により免除 |
| 名古屋市(土日クラブ活動) | 会費制で、額は団体ごと | 経済的理由などで参加が難しい場合、条件を満たせば2025年度は年12,000円を上限に市が費用の一部を支援 |
| 神戸市(コベカツ) | 会費制で、額は団体ごと | 市立中学生に会費の支払いに使える月1,500円分のポイント(就学援助世帯は月3,000円分) |
| 京都市(2028年9月以降の京クラ) | 本人負担が基本で、実額は未定 | 参加費の負担軽減を2026〜2027年度に検討 |
千葉市はモデル事業の参加費を月額1,000円にそろえ、名古屋市と神戸市は団体が決める会費に市の支援を足す形です。国も経済的に困窮する世帯の生徒の参加費と保険料を補助の対象にしており、国が半分、残りを都道府県か市区町村が持ちます。
ガイドラインは、家庭の経済格差が体験格差につながらないよう、困窮世帯への支援は「確実に措置を行うことが必要」としました。ただ、どの世帯までを対象にするかは自治体の制度しだいです。
保護者の受け止めを知る手がかりに、板橋区が区立中学校の保護者へ費用負担の考えを尋ねた調査があります。「持続可能な仕組みのためには必要」が33.6%、「メリットがあれば、受け入れてもよい」が59.3%でした。一つの区の調査なので、全国の保護者の傾向とまでは言えません。
会費以外の親の負担は送迎・大会参加費・保険
送迎の負担は活動場所までの距離で変わる
名古屋市や神戸市のように校区を越えて活動を選べる仕組みでは、活動場所が在籍校とは別の学校や施設になることがあります。板橋区の調査では、保護者の41.8%が「徒歩で通える場所」だけを選び、「公共交通機関で通える場所」「区内ならどこでも」は合わせて17.7%でした。区は「活動場所が遠くなることについては、一定の懸念がある」とまとめています。
神戸市は主な種目を在籍校か自転車で20分ほどの近隣校で活動できるよう準備し、ほかの校区へは公共交通機関や、必要に応じて保護者の送迎で通う想定です。国の補助メニューにも「移動手段確保」が入っていますが、送迎のガソリン代や交通費が家庭でいくらかかるかを示した公的なデータは確認できていません。
大会参加費は自治体の補助しだいで1人数万円の差
新潟県阿賀野市は、中体連が主催・共催する大会の参加費(交通費と宿泊費)を全額補助しています。スポーツ庁のガイドブックによると、2024年度の補助は1人あたり下越大会で18,649円、県大会で40,128円でした。市はこれで、家庭の追加負担なしに大会へ出られるようにしました。
ガイドラインも、認定クラブが受けられる支援の例に自治体による交通費・宿泊費の支援やスクールバスの活用を挙げていますが、額や範囲は自治体が決めます。大会費用の補助が自治体で違うことに触れた投稿は、2026年10月8日までに集めた意見の中に1件もありませんでした。
保険は学校の災害共済給付から民間のスポーツ安全保険へ
学校の部活動でのけがは、日本スポーツ振興センター(JSC)の災害共済給付で補償されてきました。この給付は法律で「学校の管理下」の災害に限られており、学校の外の団体が運営する地域クラブの活動は対象になりません。検討会議の提言も、地域ではスポーツ保険などに入る必要があるとしています。
中学生以下が入るスポーツ安全保険のA1区分は年間掛金800円で、2026年度の補償は死亡3,000万円、後遺障害が最高4,500万円です。学校の災害共済給付は、死亡が3,000万円、第1級の後遺障害が4,000万円です。ただし災害共済給付は医療費の給付が別にあり、後遺障害も等級ごとに額が決まるので、最高額を並べただけではどちらが手厚いとは言えません。
掛金を誰が出し、どう加入するかも自治体で違います。神戸市は市立中学生の保険料を市が負担しています。名古屋市は、活動団体が参加者を傷害保険や賠償責任保険に入れる決まりです。
地域移行の費用負担、SNSの意見は「誰が払うか」で分かれる
SNS反応まっぷは2026年6月27日〜10月8日に、Yahoo!リアルタイム検索でXの公開投稿を1,986件集めました。意見と判定した1,578件のうち、費用や家庭の負担を論じた投稿は164件でした。無作為に選んだ人への世論調査ではないため、ここでの内訳は投稿した人の中の割合にとどまります。
- 移行支持 31件(18.9%)
- 条件付き・改善要求 44件(26.8%)
- 中立・情報 55件(33.5%)
- 慎重・反対 34件(20.7%)
Xの公開投稿のサンプルを分類した件数です。社会全体の世論調査ではありません。
条件付き・改善要求の44件は、移行支持の31件を上回ります。移行支持の割合は、教員の働き方を論じた投稿では42.9%、費用・家庭負担では18.9%です。集めた投稿を見る限り、お金の話になると移行に前向きな側も条件を付けています。
移行支持に分類した投稿の中にも、移行には賛成だが保護者へ負担を付け替えることは認めない、という趣旨のものがありました。逆に、移行は支持しながら税金を使うことには反対し、費用は自分たちで払えばよいとする投稿もあります。
支持する側にとっては、教員がただで指導する前提をやめることが先です。部費が安かったのは教員の指導が無償だったからだ、という投稿の指摘は、検討会議の提言の説明とも重なります。
慎重・反対の34件で繰り返し出てくるのは、会費と送迎が重なったときに部活をあきらめる子が出るという心配です。反対する人たちから見ると、学校の部活動は家計に余裕がなくても入れる場所でした。そこに月謝と送迎の手間が加われば、お金と時間を出せる家の子しか続けられなくなると見ています。
守りたいのは、家の経済力で子どもの活動の機会が決まらないことです。反対の立場をとりながら、月謝を自治体が持つことや部活への予算投入を求める投稿もありました。
条件付き・改善要求の投稿は、誰が払うかで二つに分かれます。市税で会費を補助してほしい、経済的な理由で子どもがスポーツをあきらめずに済む仕組みにしてほしい、という要求が一方にあります。もう一方は、部活の意義を唱える側が自分たちで費用を持つべきだという考えです。
中立・情報に分類した投稿にも、部活の隠れていた費用が月会費として見えるようになった、という受け止めがありました。賛成の投稿にも反対の投稿にも、いまの部費の安さは誰かの無償の手間に支えられてきた、という認識が出てきます。見えるようになった費用を税金で持つのか家庭が払うのか、意見が分かれるのはそこです。
保護者の負担額、公的な統計では確かめられないこと
全国の地域クラブの会費を平均で示した国や自治体の統計は、確認できていません。SNSで見かける「運動部の費用は年平均8万4千円」「保護者の65%が負担を感じている」という数字も、国や自治体の統計では裏が取れませんでした。出どころは規模と方法を公表した民間のネット調査で、投稿の数字が誤りだという意味ではありません。
名古屋市の2026年度の支援上限は公式資料で確かめられず、京都市の会費はこれから決まる段階です。交付金が終わった後の保護者負担を心配する投稿もありましたが、国の補助が改革実行期間の終わる2031年度より後も続くかどうかは確認できていません。