部活動の地域移行は「進まない」とも言われますが、国の調査では休日と平日で進み方が大きく違います。地域クラブへ移したか移す途中の部活動は、2025年度の実績で休日17.5%、平日4.7%でした。問題点については、国のガイドラインが指導者・活動場所・資金の確保を自ら「大きな課題」と書いています。
部活動の地域移行はどこまで進んだ?休日と平日で違う「進まない」
数字の出どころは、スポーツ庁と文化庁が2026年8月に公表した部活動改革の取組状況に関する調査です。国は2025年12月から「地域移行」を「地域展開」と呼び替えており、調査もこの言葉を使っています。全国の部活動を12万8,000部と置いて、地域クラブへの展開と合同部活動などの地域連携の割合を年度ごとに出しています。
| 年度 | 休日の地域展開 | 平日の地域展開 |
|---|---|---|
| 2023年度(令和5年度・実績) | 5.6% | 1.9% |
| 2025年度(令和7年度・実績) | 17.5% | 4.7% |
| 2027年度(令和9年度・予定) | 38.2% | 14.3% |
休日は2年でおよそ3倍に増えましたが、平日は2025年度でも5%に届いていません。国も同じ資料で、平日について「休日と比べると進捗は緩やかな状況」と書いています。
この割合には、移し終えた部活動に加えて、移す途中のものも含まれます。2026年度と2027年度の値は自治体が出した予定で、実績ではありません。合同部活動や部活動指導員の配置といった「地域連携」は、休日も平日も1割前後でほぼ横ばいです。
国のガイドラインは2026〜2031年度を「改革実行期間」とし、休日は期間内に原則すべての部活動で地域展開を目指すとしています。平日には、こうした到達目標がまだありません。前期にあたる2026〜2028年度に国が実現できるやり方を検証し、前期の終わりの中間評価で方針を改めて決める段取りです。
地域移行が進まない理由は?4つの問題点と課題
ガイドラインの本文は、指導者と活動場所と資金の確保について、行政の力だけで全部を解決するのは難しいとも書いています。
指導者の確保と待遇が課題
地域クラブで教える人がいなければ、移行は始まりません。学校に置く部活動指導員を例にとると、東京都の都立学校では応募に部活動の指導や専門分野での経験が合わせて6年以上要ります。報酬は時間額2,360円で、2025年4月時点の参考額です。
任用は1年ごとで、再任用の上限は4回です。この仕組みのもとでは、同じ指導者に何年も続けて教われる保証はありません。
報酬の水準は自治体によってひらきがあります。熊本市の素案は副顧問の報酬を1時間1,000円と試算しており、熊本県の最低賃金を下回ります。一方で、自治体が公表している部活動指導員などの時間額は1,000円台後半から2,000円台まで幅があり、どこでも最低賃金並みとは言えません。
法律が努力義務にとどまるという問題点
地域移行の法的な根拠は、2025年9月に施行されたスポーツ基本法第17条の2です。条文は自治体に対し、中学生が地域でスポーツに親しむ機会を確保する施策を「講ずるよう努めなければならない」と定めています。国による経費の補助などの援助も「努めるものとする」にとどまり、どちらも努力義務です。
誰が何を受け持つかは、国のガイドラインが決めています。ガイドラインは市区町村などを「改革の責任主体」と呼び、地域展開の企画と調整をまとめて担う役に置きました。ガイドラインで責任主体を決めていても、取り組みの度合いを法律で強く求める仕組みにはなっていません。
自治体ごとに差が開く問題
地域による差が開いていることは、国も認めています。2026年3月のスポーツ庁の検討会議で、同庁の次長は「地域の格差というのはご指摘いただいたようにかなり大きく開いてきております」と述べました。同じあいさつでは、「地域の実情に応じた進度で」進める考えも示しました。
国の事例集は、企業版ふるさと納税やクラウドファンディングで財源を集めた例として、長崎県長与町や埼玉県白岡市などを載せています。寄付を集められるかは自治体の条件に左右されるので、こうした工夫が差を広げる要因になることもありえます。
中山間地域や離島で地域展開が難しい場合は、当面は部活動指導員の配置などで対応する、というのがガイドラインの考え方です。会費や送迎にかかる家庭の負担も、自治体の支援しだいで変わります。集めた意見のうち地域格差を論点にしたのは20件で、過疎地や地方では担い手がいないという心配などが書かれていました。
大会の出場と引率をめぐる課題
地域クラブの生徒も、2023年度から中体連の大会に出られるようになりました。2025年度の全国大会に向けた日本中体連の細則では、大会に出るときの所属は学校か地域クラブのどちらか1つでした。ふだんの練習で両方に通うこと自体は禁じられておらず、ガイドラインは合わせて週11時間程度に収めるよう求めています。
学校に残る部活動では、大会の引率を誰が担うかも負担の分かれ目になります。部活動指導員の制度ができる前の外部指導者は技術指導だけを受け持ち、大会への引率はできませんでした。2017年に制度化された部活動指導員は、顧問を任されることも、大会に生徒を引率することもできます。
「2025年度までに終わるはずだった」は本当?地域移行の期限の経緯
地域移行はもともと2023〜2025年度で終わる計画だった、という見方があります。2026年10月8日までに当サイトが集めた投稿にも、この主張が4件ありました。
期限に近い文言は、たしかに一度出ています。2022年6月にスポーツ庁の検討会議がまとめた提言は、休日の運動部活動の地域移行について「令和7年度末を目途とすることが考えられる」と書きました。中山間地域や離島を除いたうえでの目安です。
同じ年の12月に国が出したガイドラインは、この3年間を「改革推進期間」と位置づけて支援する、という書き方にとどめました。市区町村によっては合意形成などに時間がかかるとして、「地域の実情等に応じて可能な限り早期の実現を目指す」としています。全国の移行を終える期限としては書かれていません。
現在の目標は2025年12月の現行ガイドラインが定めたもので、休日は2031年度までに原則すべての部活動で地域展開を目指します。
地域移行は「無理」「失敗」か、直せば進むか?SNSで分かれる問題点の見方
当サイトは2026年6月27日〜10月8日に、Yahoo!リアルタイム検索でXの公開投稿を1,986件集めました。このうち意見と判定した1,578件を、論点と立場で分けています。投稿する人の偏りは測っておらず、社会全体の賛否の割合を示すものではありません。
問題点を正面から扱う論点の一つが「受け皿・指導者」で、238件ありました。
- 移行支持 49件(20.6%)
- 条件付き・改善要求 51件(21.4%)
- 中立・情報 88件(37.0%)
- 慎重・反対 50件(21.0%)
Xの公開投稿のサンプルを分類した件数です。社会全体の世論調査ではありません。
慎重・反対の50件には、報酬が低くて指導者が集まらないから移行は失敗する、という投稿が含まれます。素性の分からない指導者による事故や不適切な指導を心配する声もあり、慎重・反対の側が守ろうとしているのは子どもの安全と指導の質です。
条件付き・改善要求の投稿も、待遇の低さを問題にする点は同じでした。ただ、結論は予算を増やして時給を上げれば続けられる、という方向に向かいます。外部に任せても引率や事故対応が教員に残る、という不安でも同じ分かれ方が見られます。慎重・反対の側は移行の意味を疑い、条件付きの側は立ち会いや応急対応の分担を制度で決めれば進められると考えていました。条件付きの側が守ろうとしているのは、教員の負担軽減と子どもの活動の場の両方です。
2026年10月8日までの投稿では、待遇の話がそれぞれ3件、教員に残る負担の話が3件と2件でした。「失敗」と「直せば進む」の差は、待遇や分担がこの先改善されると見込むかどうかにあります。
「進まない」は移行を支持する側の不満でもある
「進まない」という言葉は、移行を支持する側からも出ています。制度・移行プロセスの論点では、移行支持が130件ありました。慎重・反対の54件より多い数です。
- 移行支持 130件(37.8%)
- 条件付き・改善要求 60件(17.4%)
- 中立・情報 100件(29.1%)
- 慎重・反対 54件(15.7%)
Xの公開投稿のサンプルを分類した件数です。社会全体の世論調査ではありません。
支持する投稿には、反対する人や動かない自治体のせいで遅れているという不満や、期限の延長を骨抜きと批判するものが混じります。少子化で部活動が続かなくなる前に、仕組みを早く切り替えたいという立場です。
慎重・反対の投稿には逆に、計画が固まらないまま急いでいると拙速さを問うものがありました。部活動が受け皿のないまま消えるのを心配する投稿です。同じ「うまくいっていない」という評価でも、遅すぎると見るか急ぎすぎと見るかで、求める手当ては正反対になります。
移行で先生の負担は減った?国の統計でまだ分からない点
移行で教員の負担が減ったかどうかは、国の統計ではまだ分かりません。公表されている教員勤務実態調査は、確認できた範囲では2022年度のものが最新です。中学校教諭が土日に部活動へあてる時間は、2016年度の1日2時間09分から1時間29分に減っていました。ただ、これは改革推進期間が始まった2023年度より前の数字で、移行の効果は次の調査を待つことになります。
平日をどこまで地域に移すかは、前期の終わりに行う中間評価で改めて決まります。その具体的な時期は、ガイドラインには書かれていません。2026年度と2027年度の進み具合も今は自治体の予定で、予定どおりに進んだかは次の調査で確かめる必要があります。都道府県ごとの進み具合を一覧にした公表資料は、確認できていません。